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黒い犬(Black Dogs : Ian McEwan 1992)

黒い犬 (Hayakawa novels)黒い犬 (Hayakawa novels)
(2000/07)
イアン マキューアン

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イアン・マキューアン(1948-)の長編第五作目の“黒い犬
“アムステルダム”や“贖罪”などの他の代表作に比べて,一般にやや評価の低い作品ですが,意外と楽しめました.

あらすじ
かつては共産主義者の同志として,そしてなによりも深い愛情で結びついていた夫婦バーナードとジューン.なぜ,彼らは突然破局を迎えたのか?私は義理の両親にあたる二人の人生に強い興味を抱き,回想録にまとめるため,独自に真相を探りはじめた.二人から話を聞くうち,やがて彼らが袂を分かった背後に“黒い犬”の存在があったことが判明する.犬の姿を借りた“悪”に出会い,すべてが変わったと主張するジューン.悪の象徴などジューンの妄想にすぎない,と一笑に付すバーナード.“黒い犬”は実際に存在したのか?それともジューンが生みだした想像の産物なのか?私は彼らの人生を影のように覆う“黒い犬”の真実を追究するが・・・



こう書くと,何かサスペンスのようですが,そんなことはありません.前半はただ,お互いに愛情は持ちながらも別居に至った老夫婦の“性格の不一致”という,マニアックな話題が繰り広げられます.
最初は,ともに共産主義者でありながら,妻は“黒い犬”との出会いがきっかけで自己啓発の道へと進みます.
人生に劇的な変化を与えるきっかけについて描きたいのか...と思っていたらそうでもなさそう.

途中からはベルリンの壁の崩壊の話題や,強制収容所の無機質な非道性が描かれます.前半との関係は...
そこを繋ぐのが“黒い犬”です.
“悪”の象徴として描かれた“黒い犬”は決してジューンの個人的な経験について描かれているのではありません.それは,あの戦争によってヨーロッパの人々の心の中に残された負の記憶.
そう考えると,あれほど対極に思えたバーナードとジューンが非常に似たもの同士だということがわかります.違いはバーナードが“社会”に重きを置いたのに対し,ジューンは“個人”に重きを置いたことだけ.

この本の最後は次の文で締めくくられます...

だが,いつかまた犬たちは戻ってきて,私たちに付きまとうだろう.ヨーロッパのどこかの場所で,いつとも知れぬ時代に.


そうならないことを願いますが...

ただの,ラヴ・ストーリーかと思いきや,骨太の思想作品.内容はそこまで濃くはないですが,その転換は見事.

Evaluation
Interest: ★★★★☆
Culture: ★★★☆☆
Readability: ★★★★☆
Reread: ★★★☆☆

Total: ★★★★☆

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